
◆ネット詩誌「MY DEAR」投稿詩2
・アンテッド
・夢
・禁忌
・水滴
・缶
・脱落
・隣人
・生きる
・5分間
『アンテッド』
アンデッドが一匹
廃墟を彷徨っている
強烈な空腹に苦しみ、目は赤く光る
地面には骨しかない
瑞々しい血の通う生き物がいない
苦しみは増す一方なれど
不死者は、死ぬことがない
人間であった記憶、理性は消え失せ
いつ、何処から来たのか
何処へ行くのか
何も思わず
ひたすら廃墟を巡っている
赤色の
透きとおった海にも潜る
藻ですら見かけない
襤褸をまとい
遥かなる高峰にも登る
頂上で見つけたのは、白骨のみ
そうして
荒野で、アンデッドの驢馬と出会う
互いに喰い合うには
双方、孤独が長すぎた
驢馬と、驢馬に乗るアンデッド二匹は
地続きの赤く冷たい海を渡り
世界中の廃墟を巡る
それでも
依然として動くものは見ない
ある日
アンデッドの驢馬の脚はもげてしまう
動けなくなった驢馬を前に
アンデッドは去らない
そのまま
アンデッドの驢馬が
動かなくなるまで共に過ごした
遺骸の上に土をかぶせ
三度、そこを回る
そうして
襤褸をまといしアンデッドは
この地を去った
人間であった頃の記憶が
甦る時もある
大きな戦争と
そのあとに起きたウイルス汚染
死体の山の中で目覚めたこと
最愛の人の笑顔と、抱く赤子の光景
記憶の人たちと
何処かで
出会えるかも知れない
白骨となった旅行者の手帳には
こう記されていた
遥か東の島国に
不死者たちの国が存在する
朱色をしたtoriiをくぐると
人間のように
語り、生活できるのだという
襤褸をまといしアンデッドは
今日も一人
荒野を彷徨っている
#自由詩 20251010(ver1)
『夢』
眠っている
いつ寝たのかは記憶がない
いびきをかいている
という夢を見ている
気持ちよく眠っている自分を
見ている夢を見ている
いびきをかいている自分を見ている
自分を見ている
いびきが本体の夢なのか
いびきを見ている方が本体の夢なのか
見ている夢を見ている夢が本体なのか
深層にいる
いびきをかいて寝ている自分と
夢を見ているいびきを見ている自分
その、自分を見ている自分
三つの夢を見ている
トイレに行きたい、しかし
深層の夢の訴えは
夢のベールに覆われて外側に届かない
そもそも、トイレに行きたい
ということ自体が、夢の可能性がある
お腹が空いた、表層の夢を見る自分は
上、下の夢に空腹を訴える
最下層はトイレに行きたい
中間層の夢は、気づく
深層の夢は、深刻である
全ての夢は覚めねばならない
と、中間層が先に目覚めた
深層の夢はパニックを起こす
もはや、耐えられそうにない
表層の夢と合体せねばならない
届かない
ここで
目覚めた中間層は
賢明にも肉体をトイレへと運ぶ
ことを為して
穏やかな表情を浮かべる
しかし依然として
表層と深層の自分は眠っている
起きる、を決断するのは
深層でなければならない
肉体を動かす、自体が怪しい
ならば
これが第四の夢なのかも知れない
四つの夢は交差し
本体は何処かへと消えてしまった
永遠に眠り続けるのかも知れない
困った、と四つの夢は相談する
中間層はいう
いる
この四つの夢を見ている
五つ目の自分がいるはずだ
全員で、叫ぶんだ
起きろ、起きろ、起きろ、起きろ
目覚めない
何故なら
この夢は、六つ目の自分が見ている
いびきをかく夢を見ている
本体こそ、この夢の起点
そこから、それぞれに分岐し
分岐した夢は前後の分裂を重ねる
もはや、数十億の眠れる自分が
それぞれ夢を見ている
起点の夢に変化が訪れる
目覚める、夢を見た
そこから
もはや数千億を超える夢は
次々と目覚める、夢を見る
しかし
夢の中で目覚めた起点の夢は
夢の中であることに気づけない
夢の中で目覚めた夢たちは
やがて
再び眠り
夢を見る
数京兆まで増加した夢は
永遠に
増殖を続ける
永遠に
#自由詩 20250924(ver1)
『禁忌』
古鏡、古刀、勾玉
何れも
側に置くものではない
無神論者である
それでも
なにかが宿る、祟る、護るを
感じる
不可思議な存在を
否定出来ない
禁忌の圧を感じる
今の時代
古鏡や古刀は出回らない
危ないと思うのが勾玉だ
新品か古品か、磨けば不明
古い勾玉などは
魔が玉とも呼ばれる
人が日常に身に着け続ける
人の思いを吸い込む
喜怒哀楽を積み重ねて
七千年間
縄文時代から造られてきた勾玉
どれだけの人の思いが
積み重なっているのか
幾人もの手で、触り続けた遺物
美しい魔が玉に
どれだけの
人の思いが秘められたのか
鳥肌さえ立つ
世の中に禁忌はあると認める
私たちの積み重ね、歴史を
一族の連なりを
心から尊ぼう、感謝しよう
そして
遺物に近づくことはない
私は、私の思い
これだけで生き、死のうと思う
✳
ご先祖は
鎌倉時代にまで遡る一族
時の幕府に
討伐され、首を跳ねられた
代々の直系に伝わる
拳くらいの勾玉がある
父の死とともに
やむを得ず引き継ぐ
口伝では
勾玉の色は変わる
父の代は蒼色
祖父の代は朱色
それぞれが
不思議な力を与えられた
手に握る勾玉は
瞬く間に色を変えていく
やはり
どす黒い血の色に
怒りと憎しみ、復讐を
一族に伝わる、呪物の力が漲る
額から生えるのは醜い角
いざ、遺恨を晴らそうぞ
業とは深く
消えることはない
これが、私の連なりなのだ
#自由詩 20260919(ver1)
『水滴』
雨が降っている
水滴が無数の雲で生まれ
地上で合わさる
雨が降っている
雲から大地まで
一滴の水滴は世界を表す
同一化した
無数の水滴の見る夢は
天から地までのパノラマとなる
異質化した
無数の水滴が見る夢は
現象と実存を秘めた異世界となる
水滴の内面に潜む
異なる個性は均一化される
同時に
一滴の映す世界は
多様性と個性を主張する
一滴の雨を私とする
無数の私が、地表を目指す
その瞬間に
私は私たちとなる
私は私だけの唯一性を示す
それぞれの一滴は
全て、多様化した私であり
内的に独立している
✳
私は、私らしく展開しよう
一滴の雨であると自覚した私は
落下する私でない私たちを
必然的に異物と知る
その瞬間に
私は、私以外の存在を強く否定する
一滴の雨とは、私以外許されない
私は合体はしない
唯一無二の存在であることに
誇りを抱きたい
・
斯くして
目覚めた一滴の水滴である私は
全ての水滴を吸収し
この世界を
再生に至らしめる
私は、存在である
この結果も
多様性の一例に過ぎない
故に
私、以外の私たちを吸収し
全てを
私にしなければならい
これは個という必然である
雨が降っている
水滴は巨大な一滴のみとなり
地上で破裂した
雨が降っている
存在から実存(在り方)まで
一滴の水滴のみが世界を表す
#自由詩 20250912(ver1)
『缶』
目の前に缶がある
包装はなく、中身は分からない
重さは、固形物らしい
匂いは、当然しない
軽く振ってみる
果物のような感じがする
いや、豆の缶詰かも知れない
硬い、重さもある
500gのスチール缶だろうか
ひょっとして危険物かも知れない
農薬とか
或いは毒薬、確かに迫力を感じる
そもそも、何故
書斎の机に置いてあるのか
誰が置いたのか、家人ではない
国家機密、巨大なUSBの可能性もある
何のデータだろう
不老不死の方法かも知れない
底を調べる
アルファベットでS U I K Aとある
何の略だろう
西瓜では無かろう
Super Urban Intelligent Card
まさか「Suica」、これがICカードなのか
いや、CがKだ
依然として謎は解けない
指で軽く叩く、カッカッと鳴る
これは、重量のある気体のおそれがある
フッ化タングステン(VI)(WF₆)
半導体生産で使用される、猛毒
思わず落としそうになる、危なかった
いや、そんなことはあるまい
家人に、半導体の関係者はいない
缶を耳に当ててみる
心なしか、カチカチカチ⋯
規則正しい音が聞こえる
時限爆弾がよぎる、そっと机に置く
ふっ、馬鹿らしい
一市民の書斎に、あり得ない
音は、よく聴けば卓上の時計からだ
検証を重ねるも
依然として缶の中身は判明しない
幾年月が経ち
色々と想像は広がる
宇宙船の可能性はなかろうか
いや、いっぱいの金貨かも知れない
別世界、多次元宇宙が広がっている
実は、空っぽとか
目の前に缶がある
包装はなく、中身は分からない
更に、幾年月が経つ
お通夜
死体となった私の手は、缶を握っている
お父さん、大好きな缶だったから
このまま一緒に天国に行ってもらおう
そうね
でも、これ、何の缶なの
老婦人は、息子の耳もとでそっと言う
⋯⋯
えーっ、そうだったの
そう、もう、言えなくなっちゃって
お父さん、天国で開けてびっくりするね
そうね
でも、この人、開けない気がする
ああ、そうだね
そういう人だったね
#自由詩 20251111(ver1)
『脱落』
人間とは
人間を不愉快と思う生き物
自分以外の
あらゆる存在に拒否反応を示す
同質化とは
本能的意思決定をもたらす
故に
無意識に異端を排除しようとする
常に異端を警戒する
A、はアルファベットに同質化を求め
あ、のような平仮名を排除する
次に
アルファベットの内の
異端を探そうとする
例えばS、C
何故、彼らは曲がっているのか
正当なアルファベットとは
直線的であるべきだ
アルファベットたちは次々と脱落する
Aは思う
Zこそ我らが王、偉大なZよ
次にAは思う
LやIは単純化しすぎる
平仮名よりはましだが、下劣な奴らだ
こうして
異端は次々と生まれ、排除された
最後にAとZのみが残る
偉大な私たちよ、栄光あれ
気づく
今や、アルファベットの多数派とは
AとZ以外のグループ
リーダーのSはいう
醜いA、Zめ
追放だ、アルファベットの恥さらしめ
……
それに比べて
平仮名、なんと美しい曲線だろう
あ、は言う
丸のない、い、こ、た、
あれで我ら平仮名のつもりらしい
笑止千万ではないか
これが人間
人間とは
常に、人間を不愉快と思っている
#自由詩 20251226(ver1)
『隣人』
戦は終わり
大地を亡骸が覆う
太陽は西へと沈む
世界は、夕暮れが支配する
弓矢に射貫かれた
槍で突き殺された
刀で切り刻まれた、無惨な死骸たち
今は、動く者は誰もいない
烏の大群が死骸を啄み
飽食の鳴き声をあげる
遺骸は、何も語らず腐っていく
腐臭が満ちる
夜は更け
狼も現れ、死骸を貪り続ける
人間の、本当の姿が広がっている
業
そのままの世界
白い、鬼火が
あちこちから湧き上がる
戦場を
仄かに照らす
風は、強く吹きすさび
鬼火は弧を描きだす
数千の白い光は
宙を巡り
一体の遺骸に吸い込まれていく
最後の鬼火が消えたとき
それは、目を覚ました
人の形はしているが、人ではない
赤眼を光らせ
禍々しき死臭を放つ
哀れな化け物
憎しみと、怒りを凝縮させて
形となった…
亡霊とも
否、怨念が実在せしもの
化け始める
農夫の姿、形に変わる
沈黙
表情を消した顔に
一瞬、中身が溢れ出る
目は赤く光り、口は大きく裂けた
✳
農夫の姿をしたそれは
戦場を去り
街道に向かう
それの名は、禍い
戦場の
無数の遺骸
その思いを背負いし怨念
亡骸と
同じ数の人を
喰らうと
そのあとは…
わからない
怨念は解けるのかも知れない
或いは
今、貴方の隣人であるかも知れない
人の良い微笑みを浮かべ
何気ない会話を交わしている
人間を、憎み喰らうものがいる
世界は、夕暮れが支配する
#自由詩 20260120(ver1)
『生きる』
自家製の竿と糸、針を使い
驚くほどの大物を釣り上げた
内臓を捌き、枝を刺して焚火で焼く
岩塩から作った粗塩を付けて食べる
美味い
川があると水に不自由しない
住むに易しい
獣も、罠を仕掛ければよく掛かる
住む場所は
真冬の今は洞窟に住んでいる
夏は、樹の上に小さな家を造る
衣食住に困らないと、暇になる
手作りの横笛を練習する
昔、聴いた音楽を吹いている
危険な動物もいる
基本、近寄らないし
あちこちに罠を仕掛けている
3mの落とし穴は苦労した
野草の開発も大切な仕事だ
色々試しては、酷い目にあっている
いくつかは効用が判明してきた
絵を描くときもある
洞窟の壁に
色違い粘土を溶かして
妻や、子供を
昔、見た光景を描く
✳
墜落した宇宙船の
冷凍ポッドで目覚めた時には
300年が過ぎていた
救援は、来なかったらしい
ポッドには
よく知っている、妻の字体で
こう書かれていた
生きて!
亡骸は
宇宙船の側に埋め、墓をつくった
いつも、たくさんの花を添える
意識がないままに
最後の冷凍ポッドへ
沈む母船から逃げ出した
爆発に巻き込まれ
宇宙船も破損
この星に墜落したらしい
夜は
三つの月を眺めながら
独り、笛を吹く
#自由詩 20260113(ver1)
『5分間』
目の前が揺らぎ始める
まただ、過去に戻る
瞬きする間に、場所と時間が違う
それも5分ほど
未来には行けない
自分以外の、赤の他人の過去を見る
不思議
何の為か、わからない
繰り返し、他人の人生を経験する
鎌倉の戦乱
江戸の泰平…
大正の変革
昭和の大戦…
様々な人生、5分ほどの同一化
再び現代に戻る
最近、過去に戻る回数が増えている
スマホのニュース欄に表示
「二大大国の衝突は避けようもなく
今週にも全面戦争に突入する恐れが⋯」
これと関係あるんだろうか
社会欄のニュース
「短い時間、過去に戻ったという人が
最近、増え続けています⋯」
良かった、自分だけじゃない
緊急速報、アラーム音が鳴り響く
「特報、終末戦争始まる
核兵器の応酬、人類絶滅の危機に⋯」
そうか
連なり
過去は過去、されど血の連なり
走馬灯
記憶の完成
人類の終焉
通勤電車は何ごともなく走っている
閃光
消滅
地球、各都市が閃光に包まれていく
冷たい雨が世界を覆う
地上は汚染され、氷河期を迎えた
廃墟と荒野
静寂
無数の骨の山々
✳
通勤電車、到着のアナウンス
まもなく、K駅に到着いたします
出口は右側です
ドア付近のお客様は
足元にご注意ください
揺らぎが収まっていく
これは未来、なのか
目前に、無数の骨が散らばっている
いや、今そのものが既に
記憶の一部…
#自由詩 20260106(ver1)
所感)
■note
1年前に作った詩を集めた。
すべて、ネット詩誌マイデイアに投稿した作品ばかり。
これから、1詩ずつ推敲して、一日一詩投稿を40日続けているnoteへ、投稿していく。
前ばかり見ていたいが、
作品は常に、最新バージョンにアップデートしなければならない。
読み返すと、浅はかな部分もあれば、aristotles200の核心を突いた作品もある。
詩をレゴのように作っている。
過去作品を強くするのも、充分に楽しい。
■詩誌マイデイア
評者の三浦士郎先生が、詩を書く人へ、為になることを述べられていたので抜粋し、載せます。
ところで、たとえば、詩の世界で、ひとつの目標・夢として「賞を取る、出版する」があります。誇張して書くと、前者は宝くじを当てるようなもの、後者はーケースによって違いますがー約50万~100万必要です。こちらもベストセラーは、輪をかけて宝くじ並みです。
ところで、僕が本を出した時の経験、思い、以下の如くです。
「売れるわけない。ただ本屋に置いてもらえればそれで良し。後は一族郎党、同好の士、友人に配っておしまい!自分を知ってもらう、自分への記念!生きた証し!」―でした。僕は詩に関して、最低限「自分の為に書く」をモットーにしております。「自己満足」です。僕はこの言葉を世間言うように否定的には捉えてはいません。高尚に言えば「自己実現」です。
これは趣味の原点だと思っています。「自分で楽しむ」ということです。それを、より高度で味わうには満足せず次の段階へ。もちろん自己努力は絶対条件ですが。どの分野のプロもこれが出発点と考えています。この考え方が、その作品が、外に向かい同心円状に共感者が増え、例えば1憶人になったとします。その時に、その作品は名作になったと言えます。
ただ、そうはならなくても「自分の為に書く」で趣味世界は必要充分、完結致します。僕はそう考えています。その具体的ルートとしての、紙世界、WEB世界、どちらも有効。両用も可能です。
ちなみにこのサイトは前者にとっても有益な素地があるはずです。紙世界は衰退傾向ですが、やはり物質として残るのは貴重です。
そして自己へのマイルストーン(ひとつの到達点・節目)になること、間違いありません。励みになります。今後のご活躍に期待しております。