四端録

東洋思想に関して。四書を中心に意訳して所感を述べ、自由詩にて日々の出来事、思うことを記しています。

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推敲246

『救い』

執着を抱き

生命、終えた後も

この世に留まる

 

人魂が

都心を彷徨う

 

畜生の類いに

取り憑かれ

人の様相を失う

 

悪鬼と成り果てて

世の中を呪い

行きずりの人間に、祟る

 

哀れ

 

その苦しみを

終わらせて進ぜよう

 

至る所から

吹き荒れる火炎

 

怨みを晴らしたい

地獄に行きたくない

全て、勘違いをしている

 

ここは

地獄の底に他ならない

 

地獄で苦しむ亡者たちよ

目を覚まして

自分自身を思い出すがいい

 

ここが、貴方の罰であり

ここが、貴方の棲家である

ここが、貴方の救いなのだ

 

鈴の音が

何処からか聞こえる

#自由詩 20260803(ver1)

 

自由詩 No.251

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◆今週の詩

- 選択肢  
- 推移  
- と  (詩誌 MY DEAR 佳作)
- 街  
- 集団  
- 黒百合  
- 不要  
- ありがとう  (詩誌 MY DEAR 投稿)
- 通信

 

◯月曜日の朝、通勤

『選択肢』

横断歩道

車は止まらない

子供が飛び出した

危ない!

思わず、手を差し伸べる

 

ドン!

視界が反転

身体が宙を飛ぶ

グシャ

お決まりの異世界転生

 

目覚めると

女神様が目の前にいる

望む能力はなにか、尋ねられる

 

なるほど

そういうことか

 

異世界は望まない

今の世界に戻して欲しい

願いは一つでいい

 

何をしたいのですか

 

サクリファイス

病気の子供たちを

救いたい

 

人間一人の

細胞は

37兆2000億個ある

 

私を分裂させ

細胞のサクリファイスで

病める子供の臓器を一つ

完治させて欲しい

 

最後に、貴方は消えてしまいますよ

望むところだ

 

よろしい

 

その瞬間

目の前には

37兆2000億体に分裂した

自分たちがいる

 

いいか

機会は一度きり

世界中の、病める子供たちを

救うんだ

 

地平線にまで広がる

37兆2000億体の

自分たちがうなずく

 

各地の病院、貧困街に

散らばっていく

 

ああ、心臓が悪いんだね

よし、治してあげる

細胞は、瞬く間に燃え尽きる

 

痛い⋯

貴方の細胞、一つ一つが

自らを神に捧げています

代償があってこそ、望みは叶います

 

全身が

崩れていく…

貴方の望んだことでしょう

 

もちろんだ

 

細胞は、瞬く間に減っていく

残り8千個…

そろそろ

お別れだね

 

その気になれば

チート級の力を使って

異世界で楽しく過ごせたものを

 

いいんだ

知っているんだろう

私の罪を

……

 

軍靴の行進

積み上げられた白骨

演壇の上で

群衆の歓声に応えている

 

生まれる前の記憶…

 

細胞の数は0に

身体は灰へ

 

まだまだだ

 

魂も

可能なのか

はい

特別なんだろう

はい

生命を一つ救えます

よし、ランダムで飛ばしてくれ

 

貴方の娘さんでなくていいの

ああ、これも運だろう

 

じゃあ、そろそろ

さようなら

 

   ✳

 

浮かんでいる

 

混沌の海を

彷徨っている

 

もう、誰でもない

#自由詩 20260727(ver1)

 

◯月曜日の夕方、通勤

『推移』

まだだ

諦めるには早い

手は、指も

動く

 

私は誰か

何に連なる者か

ここに

何の為に存在している

 

出来ることは

いくらでもある

 

試行と修正を繰り返す

 

意思と

その行動が

自ら、その人の価値を決める

 

他人の評価、評判は

後から追いついてくる

 

世界中で否定されようが

自分自身が、肯定する

自身自身を、肯定する

 

確固たる意思を

不動の決心を抱かねばならない

 

産まれた、その日に

我が子を抱いた瞬間

契約を結んだ

誰とか

自分自身との契約に他ならない

 

この子は、幸せになる

その為に

出来ることは

いくらでもある

 

   ✳

 

ー16年後ー

親父、なんか臭くない

ああ、加齢臭〜

寄らんといてや

 

あのさ

なんで、そんなによぼよぼなの

顔キモっ

 

親父、これ

Amazonのカートに入れたから

買っといてな

 

契約を交わしたのだ

……

 

他所も

こんな感じなのだろうか

粗大ごみ感というか

妻からも

お父さんって邪魔ねって

なんか

捨てられそうだし

 

うーん…

みんな、集まれ

 

言っておくことがある

いいか

父さんは父さんなんだぞ

わかってるか?

父さんは父さんなんだぞ

 

父さんは父さんなんだぞ

#自由詩 20260729(ver1)

 

◯火曜日の朝、通勤

『と』

思い出すだけでも

冷や汗が出る

16年前のこと

 

子が産まれ

初めて

我が家に着いたとき

 

私の部屋の

床に布団を敷いて

そっと赤子を置く

 

家族が増えた

自分の分身が

ここで寝ている

 

心はそわそわ

どきどきと

準備万端で迎えたのに

色々と抜けがある

嬉しさと落ち着きのなさ

未知への期待と恐れ

 

 

私は動転している

どうする

どうすればいい

何が足らない

妻は疲れ果て寝ている

部屋から部屋

廊下、玄関

ばたばたと早足で歩き回る

脳内は

フル回転している

心は動揺し

ますます早足で歩き回る

 

 

下げる右足の

真下に

産まれて7日目の赤子がいた

 

無意識に

 

左足先に

思いっきり力を入れた

 

後先なしの

前受身を

書斎の机めがけて

跳ねる!

 

どん!

机にしがみつく

肘、膝に鈍い痛み

 

まだだ

床には赤子が寝ている

 

床に崩れ落ちないように

なりふり構わず

窓に向かって床を蹴る

額を窓に

ごん!

 

ようやく姿勢が落ち着く

大きな音に

目を覚ました妻が、部屋へ

無様に

机にしがみつく夫と

すやすやと眠ったままの赤子

 

ベビーベッドへの移動を

懇願し

妻子が部屋を移る

 

深く息を吐き

支えていた机ごと

床に倒れた

 

恐怖で青ざめる

本気で危なかった

全身から汗

あちこちに青痣

頭にたんこぶ

 

   ✳

 

あれから16年

55歳になっても

あれほどの危機は

一生一度もない

未だに

思い返すだけで

冷や汗が止まらない

 

学生時代の四年間

合気道を習っていた

受け身を

無意識に行ったらしい

#自由詩 20260728(ver1)

 

◯火曜日の夕方、通勤

『街』

都市伝説の類い

周りを見回して

真しやかに囁かれる

 

死者は復活している

 

暗黙の了解

実は皆、知っている

知らない振りをしている

 

死人の街がある

 

公共交通機関、駅もある

乗り降りする死人に混ざり

少数ながら生者もいる

 

死人は

自分が死人と知っているが

普通に生活している

通勤電車に乗る

会社で働く

帰りに、酒を飲むこともある

 

葬儀が終わり

死体は待機室に運ばれる

しばらくすると

目が開く、蘇る

係員から

何ごともなかったかのように

新しい名前と

身分証明書が与えられ

用意された衣服に着替え

決められた住居へと向かう

 

新しい人生が始まる

住居には

死人がいて、家族となる

 

   ✳

 

都市伝説の類い

周りを見回して

真しやかに囁かれる

 

生者は存在している

 

暗黙の了解

実は皆、知っている

知らない振りをしている

 

生者の街がある

 

夢うつつ

遠い外国の話しとか

いや、心霊の類い

実は宇宙人かも

宝くじの1等当選より

確率は低い

 

   ✳

 

今日もため息をつく

どうして、みんな見るんだろう

通勤、会社、お店…

何処でも注目を浴びる

鏡で顔を見る

別に、有名人にも似てない

 

繁華街

人混みを歩いている

店の窓ガラスには

一人を除いて、誰も映らない

 

防犯カメラの映像

廃墟を一人

歩くサラリーマンがいる

周囲には

人魂が渦巻いている

 

もう一軒、行こうよ

千鳥足で

みんなとカラオケへ向かう

ああ、楽しいな

#自由詩 20260728(ver1)

 

◯水曜日の朝、通勤

『集団』

得体不明の

咳が流行っているらしい

 

通勤電車

あちこちで咳き込む人

ぐっと息を止める

感染されてはかなわない

それぞれに生活があり

風邪を引いたら

即休める

夢のような会社は少ない

 

また一人、咳込んでいる

周囲を見回す

無駄と分っていても

息を止める表情の人が多い

 

わからぬように

けれども

一様に

眉間に皺を寄せて

不快感を示す

もちろん、仕方ないこと

誰も直接クレームは言わない

 

咳き込む人を中心に

円を描いて

不快顔が広がっていく

 

しばらく

間を置いて

わざとらしく舌打ち

ちっ

わざとらしく咳をする

ゴホン、ゴホン

 

本気で

気管が詰まったことがある

顔を真っ赤にさせて

咳の発作、止まらない

飴ちゃんは切らしている

ゴホンゴホンゴホン

胸をドンドンと叩く

流石に、周囲も身体を引いている

と、収まった

 

ゆっくりと

呼吸を鎮める

 

そういう

雰囲気の中で

電車は進む

 

咳をする人は

抑えようとはしても

止まるものではない

ゴホン、ゴホン、ゴホン

すっきりと終わらせて

大概が

無表情で

何ごともなかったかのように

やがて

周囲に紛れていく

 

電車はホームへと滑り込み

扉が一斉に開く

ようやく

新鮮な空気が吸えると

皆が思う

#自由詩 20260729(ver1)

 

◯水曜日の夕方、通勤

『黒百合』

古の寺院の地下深く

天井から光が差し込み

一輪の黒百合を照らす

 

枯れることなく

常、緑の葉を茂らす

 

夕暮れが

紫色に変わる時

一輪の花が咲くという

 

それを見た者は

二度と地上には帰れない

 

生きる業のままに

怪異へと変化する

もはや、人の形を留めず

 

唸り声を発し

醜い、虫のような姿へ

一様に

世を呪う、怒りを示す

 

一輪の黒百合を

囲む

鉄格子が開かれる

 

悍ましき

虫と人が混ざりし異径が

一斉に現れる

共に唸り声を発し

自分自身と、世界の全てを

喰らい尽くしたい

 

天井から漏れる

紫色の光が薄まると

一斉に、牢屋に戻っていく

 

壁には彫刻が刻まれている

 

黒百合を模し

一体の女神を

異径の者どもが

拝み伏している

 

女神は

目が無数にあり

昆虫を思わせる身体

鎌のような手

九本の尖った脚

 

異なる世界の

忌まわしき支配者

封印されているとも

力を蓄えているとも

 

彫刻は

こうも刻まれている

 

世界中に

黒百合の花が咲き

巨大な

異径の者どもが人間を喰らう

 

白骨の山の上に

黒百合の女神が立つ

元を同じくする

人間と、異径の者どもが

ひれ伏している

 

空には

たくさんの船が浮かび

何処かへ

旅立とうとしている

 

紫色の光が

地上を照らす

 

女神は

中央に三つ並ぶ星を

見つめている

 

過去なのか

未来のことなのか

黒百合の女神は

妖しく微笑んでいる

#自由詩 20260729(ver1)

 

◯木曜日の朝、通勤

『不要』

目の前に現象がある

見えている範囲は、実在している

知識として

この延長に、膨張する宇宙もある

 

私と宇宙

実在している

ここに私がいて

ここに私がいることで

宇宙が存在している

 

意識が、そう認識させる

しかし

宇宙には意識は無かろう

他者から

認識されることにより

宇宙は実在する

 

私は、宇宙を否定しよう

では

宇宙を否定する私を

何をもって、私と認識するのか

 

私は目を閉じる

呼吸する、心臓が動いている

水を飲む、何かを食べている

眠ることは大切だ

服や靴、家も必要

これらを維持する為の社会がいる

 

ここに宇宙は必要だろうか

宇宙よ、君は私には不要なのだ

私は宇宙を否定することを肯定する

 

目の前に現象がある

見えている範囲は、実在している

考察の結果として

この延長の、汎ゆる存在は不要である

 

意識が私である

私は私だけの世界で生きている

世界とは

私にとっての私が全てである

 

宇宙とは何か

伝説の類い

おとぎ話に出てくるお菓子の家

百歩譲っても

誰かが膨らませた

シャボン玉

#自由詩 20260730(ver1)

 

◯木曜日の夕方、通勤

『ありがとう』

少し気分が悪くて

ホームの椅子に座っていた

寄る年波に

身体は悲鳴を上げる

 

痛みに耐えている

脂汗

 

次々と変わる、横に座る人

気がつけば

古い本が置かれていた

忘れものらしい

 

誰も取りにこない

見たことのない文字

何気なく手に取り

ページを開く

 

オカルト系らしい

魔法陣や怪物が描かれている

興味を失い

椅子に置く

さて、ぼちぼち家に帰ろうか

 

痛む身体を庇いながら

自宅へ

書斎の机の上に

駅で見た本が置かれている

 

声を失う

呪いか、何かだろうか

明日、駅に持っていこう

スーパーのビニール袋に入れ

鞄のなかに入れる

 

食事、お風呂を済ませ

布団に横たわる

鈍い痛み

さて、寝ようか⋯

ベッドライトの前に

本が置かれている

 

本は開かれている

絵と読めない文字が見える

 

やはり呪いの本か

どうやら取り憑かれたらしい

絵を見る

魔法陣を描き、呪文を描くと

病に苦しむ人が

立ち上がり、笑顔を浮かべている

 

⋯⋯

ダメ元、やってみよう

A4の紙に

本に描かれた魔法陣を写す

 

突然

周囲の家々から

犬の遠吠えがする、止まらない

何かに、怯えている

 

その下の呪文も

丁寧に書き写す

 

完成した

何も変わらない

悪魔も出てはこない

 

苦笑して

紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱へ

馬鹿らしい

犬の遠吠えも収まっている

 

その夜は

気持ち良く

熟睡出来たようだ

 

朝、目覚める

背伸びをする自分を見ている

あーよく寝た

声も聞こえる

 

何処も

身体から痛みを感じない

 

何故、自分が目の前にいるんだろう

違う

中身は人間ではない

若々しい姿の私が

近づいてくる

笑顔で、私を手に持つ

 

ありがとう

66年6カ月ぶりの

生身の身体だよ

 

そう言って、本を閉じられた

 

視界が暗くなる

意識はある

皮表紙に肌のような感覚

音も聞こえる

 

   ✳

 

通勤電車が行き交う

駅のホーム

長椅子に、古い本が置かれている

 

誰か、開けてくれるのを

待っている

#自由詩 20260730(ver1)

 

◯金曜日の朝、通勤

『通信』

元気かい

そっちは月曜日の朝だね

驚くなよ

僕は、今、金曜日の夕方にいる

え、寝ぼけている?

まあ、信じられないだろうけど

正真正銘

僕は未来にいる

 

通勤中

駅のホームの間に

歪みを見つけたんだ

 

ここは5日後の未来らしい

よく聞くんだ

2人で大儲けしようぜ

くじの当たり番号を教えるから

山分けにしよう

 

   ✳ 

 

元気かい

連絡をしなくてすまない

こっちは

大変なことが起こってるんだ

ニュースによれば

最終戦争が始まるかも知れない

みんな、シェルターに向かってる

君も、準備しといた方がいいよ

 

あと、

歪みが

不安定になっている

通信出来る間に、そっちに戻るから

じゃあ、また

 

   ✳

 

だめだ、始まってしまった

よく聞くんだ

敵は、人類じゃない

最終戦争は、奴らの仕掛けに過ぎない

無人の都市を

次々と占領していっている

 

奴ら、蟻そっくりの姿で

耳から脳に入って

人間を操ってるって噂だ

 

ああ、歪みが

消えようとしている

もう、過去には帰れそうにない

 

いいか、その世界に伝えてくれ

満月の夜に

月が二つに割れて

奴らが、無數にやってくる

 

月が割れる瞬間に

熱核兵器を爆発させるんだ

 

だめだ

耳に中に…入られた

意識が遠ざかる

 

   ✳

 

やあ?

お久しぶり

今、新世界²にいるんだ

こっちは€£∆µ∑¢“でさ…

√√±µ

凄く£∆π

素晴らしい世界µ∑∝πだよ

 

歪みは見つけたよ

 

そっ$≈も

間もな»⊅だかµ∑∝

待っていてね

#自由詩 20260731(ver1)

 

所感)

■近状

ネットフリックスで、「ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋」を観ている。

一話完結で全八話ある。

ホラーものが中心であり、大好きなラヴクラフト風の作品もある。

 

20代前半、S・キング、P・K・ディックが大好きで、特にS・キングの初期中短編は、何か取り憑いていなければ書けない、神がかった傑作揃いばかり、と思う。

当然ながら、両人の影響を受けている。

 

勧善懲悪のストーリーは王道であるけれども、同軸上で何か禁忌的な、とてつもないラスボスがいる、最後まで謎は解けない。

いかにも海外ドラマの売り、昨今では、もはや陳腐化されているが私は好きだ。

日本の時代劇のように、結末が分っていて面白い、黄金パターンではないか。

 

今週、ドラマの影響でかホラーものが多い。

この系統の作品は基本形はディストピアであり、そこからアポカリプス、ポスト・アポカリプスへと派生する。

書いていて楽しい。

来週も続けるかも知れない。

 

ジムに熱心に通っている。

筋肉は一向についていない。

基幹を鍛えている

と、周囲には嘯いてはいるが、

恐らくは自己流で、上手く行っていない。

まあ、如何にもaristotles200である。

苦笑しながらも、やり方は変えない。

そう、私は頑固で意固地だ。

禁酒は4カ月を越えた、まだまだ行けそうな気がする。

もちろん、高潔なプラス思考のaristotles200など存在しない。来たるべき時になれば浴びるように酒を呑み、また禁酒一日目に戻るのだ。

 

孟子、儒学関連の本は、基本毎日読み返す。

他にニーチェや柳宗悦、最近はジル・ドゥルーズなどの本を読んでいるが、出番は、当分はないかも知れない。

筋トレとネットフリックスに心が寄っている。いや、これくらいで精一杯だ。

自由詩 No.250

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◆今週の詩

- トノサマガエル  
- 12時間50分  
- 墓  
- 赤    (詩誌 MY DEAR 投稿)
- 出口  
- 負け  
- 警告  
- 裁判記録  
- 雑踏

 

◯月曜日の朝、通勤

『トノサマガエル』

朝の通勤風景、ほぼ満員

 

脚を大きく開き、座る

威嚇するような鋭い眼光

くしゃみを空中に飛ばす

40代後半、男性がいる

身なりは良い

 

何も、法を越えていない

ただ、公共の電車の中で

不快感をばら撒いている

大きく、舌打ちしている

酒臭い息を周囲に撒いている

 

人間として

どうなのだろう

 

行きずりの他人

どうでもいい

早く、視界から消えてくれ

 

終着駅まで、あと三駅ある

 

不快な人が目の前にいる

巡り合わせ、自らの運の悪さに

苦笑いする

 

前に立つ私の、苦笑に

違和感を覚えたのか

顔を強張らせ

腕組みをし、のぞき見をしてくる

 

子供の頃、田んぼで見かけた

拳くらいの大きさの

トノサマガエルを思い出す

 

警戒している

こちらを繰り返し、のぞき見している

どう、逃げるか探っている

 

わざとらしく

咳払いをする

 

身体が、ビクッと反応している

難癖をつけてくるのか

何か起こるのか、恐れている

 

やはりカエルか

 

捕まえたトノサマガエルの

ゴムのように力強い

ヒヤッとする身体を思い出す

逃げようと

両手の中で、力強く暴れている

脳裏に

子供の頃の

田舎の風景、匂いが蘇る

 

   ✳

 

アナウンスが流れ

電車は、終着駅のホームへ滑り込む

 

慌ただしい雰囲気

さあ、一日が始まる

 

何ごともなかったかのように

座席の人は立ち上がり

混み合う、通勤風景に消えた

 

私も、乗り換え駅に向かう為に

朝の通勤風景に紛れていく

#自由詩 20260713(ver2)

 

◯月曜日の夕方、通勤

『12時間50分』

【PM8∶00】

食事を終え

就寝までの時間を楽しむ

 

何をしようか

映画を観る

本を読む

ゲームをする

友人にラインする

音楽を聴く

することは無限にある

 

【PM10∶00】

小腹が空いた

近所のコンビニへ向かう

唐揚げと総菜パンと飲み物

むしゃむしゃと食べ、飲む

ナイスな時間

鼻歌をうたう

ふふふーふーん、ふんふん

 

【PM12∶00】

もう、こんな時間か

明日も仕事がある、寝る準備を

お風呂

歯磨き

部屋を暗くする

 

【AM1∶00】

スタンドライトを点けて

スマホを手に取る

少し、ニュースでも観よう

SNSをチェックして

何となく動画を流し見ている

 

【AM2∶00】

やばい、寝不足確定した

朝、起きれるかな

明日の会議、大丈夫かな

早く寝よう

消灯

……

眠れない

 

【AM3∶00】

あと数時間で

起床せねばならない

うーん

寝返りを繰り返す

……

眠れない

 

【AM4∶00】

窓ガラス越しに

バイクや車の音が聞こえる

徹夜で

今日の仕事はきつすぎる

どうして

こんなことになったんだろう

うーん

 

【AM5∶00】

就寝中

 

【AM7∶00】

目覚し時計が鳴っている

ピピピピ、ピピピピピピ…

うーん

地獄だ

眠りたい

全てを放り投げて

今、眠らせて欲しい、頼む

 

【AM8∶00】

いつも通りの時間に

家を出る

寝不足でふらふらしている

 

【AM8∶20】

通勤電車

ラッキー、席が空いた

座る、眠る、意識を失う

……

 

【AM8∶50】

電車は終着駅に止まっている

周囲には誰もいない

しまった

寝過ごした

よろよろとホームへ歩きだす

 

ここは何処だろう

空間が歪む

……

乗り換え駅を、三つ過ぎている

会議が

始まってしまう…

#自由詩 20260713(ver1)

 

◯火曜日の朝、通勤

『墓』

塩の水に包まれた

青い惑星がある

 

火山と混じり合い

陸が生まれ

長い年月のあと

人工の光が星を覆う

 

夕暮れ

地響きが

世界中を覆い

大空は鳥が逃げ惑う

 

終焉の日

 

発電所は

青白い光を放ち

次々と

軌道上に光点を放つ

 

大海嘯は

都市も、きのこ雲も

全てを

呑み込んでいく

 

巨大な渦が生まれ

有象無象の

諸々が

海に、呑み込まれていく

 

結末の日

 

塵から塵へ

水から生まれし

諸々は

行いの果てに

今は

塩の水の中を彷徨う

 

無数の遺骸たち

 

塩の水に包まれた

青い惑星がある

 

暗い

深海の海底で

ようやく

諸々は、眠りに就く

 

塩の水に覆われた

宇宙に浮かぶ

墓がある

 

弔う人もなく

ただ、青い光を放つ

#自由詩 20260714(ver1)

 

◯火曜日の夕方、通勤

『赤』

夕焼けを描いた

一枚の絵がある

その赤は

血の色の様にも見える

 

観る者の心を、虜にする

還っていく

時と、空間を越えて

原初の記憶へと

 

無名氏の描いた

その絵は

とある美術館で

観ることが出来る

 

夕暮れ

館内に

赤い光が差し込むと

絵の赤と

夕暮れの赤が

反応する

 

絵は

溶けるように

滲み出し

現実を浸食し始める

 

気がつけば

絵の中に

自分がいる

 

血の様な赤の世界で

自分も

赤く染まり

夕焼けに吸い込まれていく

 

言葉は

意味を失い

心は

夕焼けと同一化する

 

始まりと

終わりの記憶

 

赤い

沈みゆく太陽とともに

ここは

全てがある

 

⋯⋯

夕暮れの

時間は終わり

 

蛍光色の

明かりに照らされた

一枚の

絵の前に立っている

 

絵を眺める

 

今日も

連れて行っては

くれなかった

#自由詩 20260714(ver1)

 

◯水曜日の朝、通勤

『出口』

うたた寝してしまった

通勤電車

横一列の

長椅子に座っている

 

ガタンゴトン、ガタンゴトン

モーターの駆動音がする

 

肩に、軽く触れられた

瞼を開ける

子供くらいの大きさの

アマガエルが

こちらを見ている

 

瞼を閉じる

何か間違っている

 

再び、軽く触れられた

そっと瞼を開ける

今度は

アマガエルが

話しかけてきた

 

貴方は誰ですか

 

沈黙で答える

私は誰なんだろう

 

一瞬で

記憶が回答する

なら

目の前の非合理的な存在は

誰なんだろう

 

貴方は誰ですか

私はカエルです

 

沈黙で答えた

確かにカエル、アマガエルだ

問題は

その大きさと言葉を話すこと

いや、そもそも

通勤電車の中で、何故カエルがいる

 

私は⋯

自己紹介を終える

 

なるほど

では、端的に申します

あそこの

アカハライモリが

貴方を軽食にと狙っています

 

斜め横を見る

 

太った、2mほどの

アカハライモリが

そっと視線を反らした

 

どうしたら良いですか

 

早く、人間の世界に

お帰りなさい

ここに

貴方の居場所はありません

 

どうすれば戻れますか

 

簡単です

カエルは大きな口を開く

ここに

入れば良いのです

 

なるほど

どちらにしろ

食べられるらしい

 

表情を消す

 

立ち上がり

手に抱えたままの革鞄を

頭の上にあげる

 

力いっぱい

振り降ろす

 

カエルは頭が歪み

床に倒れてしまった

 

アカハライモリが近づく

心配していたんですよ

危なかったですね

ここいら、危険なカエルが多いから

 

無言で

手に抱えたままの革鞄を

頭の上にあげる

 

力いっぱい

振り降ろす

 

アカハライモリも頭がへこみ

床に倒れてしまった

 

革鞄には

手作りのお弁当が入っている

車内を見回す

乗客たちは、悲鳴をあげている

 

ガタンゴトン、ガタンゴトン

モーターの駆動音がする

 

おかしいな

なんで、人間の言葉を喋るんだろう

革鞄を

両手に持つ

赤い血にまみれている

 

さあ、戻らなきゃ

早く出口を探そう

#自由詩 20260716(ver1)

 

◯水曜日の夕方、通勤

『負け』

ぶっかけ肉味噌うどんの

食券を

販売機で買う

 

いらっしゃいませー

カウンターに置く

お冷を入れ、お箸を取る

プレートに置く

うどんが冷やし終わり

トッピングの時間

新人さんらしい

明らかに迷っている

刻みネギを、、、大量に

ラッキー

肉味噌を

目方分うどんの上へ

 

そこで手が止まる

マニュアルをパラパラ、、、無い

他の店員さんは不在

瞬時に決断する

そのまま

プレートへと置く

おまたせしましたー

 

半熟卵と

チューブ生姜を忘れている

店員さんは

もはや、次の注文に注力している

どうする

どうすれば、、、

 

おずおずという

あの、、、卵、ありましたよね

 

えっ!

店員さんの動きが止まる

並んでいる客も

沈黙のまま

店員さんを見つめる

 

カウンター横の

マニュアルには

ぶっかけ肉味噌うどんは

なかった

時間だけが

過ぎていく

 

お待ちください

店員さんは

小走りに奥の厨房へ向かう

焦っている

パラパラとめくる

見つからない

 

駅ナカだけに

客が、次々と並んでいる

こちらを見ている

 

あの〜

私の勘違いかも、、、

パッと

笑顔に戻る店員さん

並んでいる客も

ほっとした雰囲気

再び

毅然とした態度で

ありがとうございます

と、席へ行くように圧

 

負けたのだ

⋯⋯

半熟卵と、チューブ生姜抜きの

ぶっかけ肉味噌うどんは

何か物足りなさを感じた

 

食べ終えて

カウンターにプレートを置く

ごちそうさまでした

ありがとうございましたー

笑顔で

見送られた

 

店の外に出る

販売機のボタンを押す

ぶっかけ肉味噌うどんの

画像には

大きく、半熟卵が確認出来る

 

半熟卵が

肉味噌に優しく絡む

ぶっかけうどん

どんな味になるのだろう

 

気が弱すぎる⋯

まあ

こういう日もあるさ

#自由詩 20260715(ver1)

 

◯木曜日の朝、通勤

『警告』

疲れている

朝、意識が戻った

起床した瞬間に

泥沼に沈んでいる感覚

手足は異様に重く

足腰には、鈍い痛みが走る

肩周りは

石のように固まり

首を振ると軽い頭痛がする

 

何という惨状

スマホのアラームが

無情にも鳴り続ける

そうか

木曜日の朝だ

会社に行かねばならない

 

目をしばしばさせながら

アラームを止める

ゆっくりと身体を起こす

腰から嫌な痛み

太ったお腹を右手でさする

さて

思考が空回りしていく

今日の会議で報告する⋯

昨日下がった株は⋯

病院の予約は⋯

 

よいっしょっ

立ち上がり

横の体重計で測る

72.9kg

また、太っている

軽くため息をつく

ようやく

意識がはっきりと戻る

 

寝ている間に

何か、大切なことに

気づいたはず

 

あくびをする

 

もう、忘れてしまった

確か

夢の中で⋯

誰かが、警告してくれていた

カーテンを開ける

窓の外を見る

思い出した

 

逃げろ、だ

 

航空機が

尾翼から煙を上げながら

こちらに

向かってくる

 

引きつった顔を浮かべる

パイロットと

目が合った

なにかを叫んでいる

 

えっ?

#自由詩 20260717(ver1)

 

◯木曜日の夕方、通勤

『裁判記録』

【刑事裁判:冒頭手続・証拠調べ】

日時:2026年6月18日

場所: 地方裁判所 第101号法廷

被告人:A氏(55歳、会社員)

被害者:C氏(46歳、会社員)


起訴状概要:被告人は、

2026年4月某日午前8時15分頃通勤電車内で

被害者C氏の首すじに噛みつき、

全治10日の加療を要する怪我を負わせた

(傷害罪)。


1. 冒頭陳述(検察官)

「被告人は、混雑した車内において、

被害者の左側首すじに深く噛みつきました。

社会人として、また大人として

極めて理性を欠いた粗暴な犯行であり、

被害者が受けた精神的ショックと

身体的苦痛は甚大です。」


 2. 被告人質問(弁護人)

弁護人:「なぜ、

このような行動をとったのですか?」

被告人:「……お腹が空いていました。

朝から電車はすし詰め状態で、

太って、美味しそうな中年男性が、

目の前にいて

首すじを見た瞬間に、

気がついたら食事をしていました。

やってはいけないことをしたと、

今は猛省しています。」

弁護人:「被害者に謝罪は?」

被告人:「示談の申し入れをしていますが、

相手方が拒否されており、

直接の謝罪もできていません。

誠心誠意、償いたいと思っています。」

 

 3. 被告人質問(検察官)

検察官:「あなたは55歳、

社会経験も豊富です。

なぜ『食事』という選択肢に

至ったのですか?」

被告人:「……吸血鬼なんです。

お腹が空いていて、

自分でも異常だったと思います。」

検察官:「『異常』の一言済ませるのですか?

 噛みつき、血を吸う、食事という行為は、

極めて原始的で、

相手に強い恐怖心と嫌悪感を与える

卑劣な行為です。

被害者は現在も電車に乗ることに

強い恐怖を感じています。

その責任をどう考えていますか?」

被告人:「……申し訳ありません。」


【論告・弁論(要旨)】

検察官(論告):

「犯行の態様は極めて悪質かつ突発的で、

公共の場における安全性に対する信頼を

著しく損なうものです。

前科はないものの、短絡的な食欲の暴走は

再犯の危険性を示唆しています。

懲役1年を求刑します。」


弁護人(最終弁論):

「被告人は、善き吸血鬼として

現代の人間社会で生きる、ストレスに

精神的に追い詰められていました。

計画性はなく、突発的な食事行為です。

現在は深く反省し、

公共の場では、

二度と繰り返さないと誓っています。

寛大な判決を求めます。」


【裁判官からの言葉】

裁判官:

「Aさん。今回、あなたは一瞬の食欲で、

他人の身体を傷つけ、

その人の日常の平穏を奪いました。

電車という空間で、

人間の血を吸うという行為が

いかに異様であり、

被害者に拭いがたい嫌悪感を植え付けるか、

よく考えてください。

あなたの食欲が、

他人に暴力を振るう理由にはなりません。

判決は後日言い渡します。」

 

傍聴席の人々が立ち上がる

 

頭を下げたまま

喉を鳴らす

牙が、唇から覗く

太った裁判官の首すじが

やけに美味しそうだったのだ

#自由詩 20260717(ver1)

 

◯金曜日の朝、通勤

『雑踏』

横断歩道

車は止まらない

子供が飛び出した

危ない!

思わず、手を差し伸べる

 

ドン!

視界が反転

身体が宙を飛ぶ

グシャ

 

周囲には

悲鳴が響きわたる

人混み

救急車のサイレンの音が

大きさを増す

 

何ごともなかったように

立ち上がり

軽く埃を払う

子供は泣いているが

無事なようだ

 

そのまま

人混みの中へと紛れた

 

葬儀の最中に目を覚ました

慌てふためく親族

病院へ

心臓は鼓動していない

 

姿を消すしかなかった

 

何処にも居場所はない

無名氏として

人混みの中で過ごしている

目的もなく

ただ、時間を浪費している

 

何の手がかりもない

無為に、身体を動かしている

穴を掘る

棺桶の中で過ごしてみた

暗闇で、時間が過ぎていくだけ

何も変わらない

 

仕方がない

外に出て

人混みに混ざり

生活をする、フリをするしか

することがない

 

一人で

雑踏を歩いている

 

死人の街の中を

#自由詩 20260718(ver1)

 

所感)

■雑感

人間であるからには欲がある。

何らかの文章を書く人間なら、書いたものに対する評価が気になる。

評価が気になると、他人の評価を気にかけた文章となる。

いつの間にか、文章は自分を離れ、他人の為の文章となる。

生活の糧を稼ぐ為ではない。

何故、このような、自ら悪路を選ぶ必要があろうか。

 

人間であるからには欲もある。

同時に、欲以外の思いもある。

この世界を傍観する、観察者として(自分をも観察対象として)、思うことを文章とする。

こういう自由詩があっても、人様に迷惑はかけまい。

文章を、詩を、欲で濁らせてはならない。

誰かに媚を売るようではならない。

自由詩 No.249

f:id:aristotles200:20260609124751j:image

◆今週の詩- 倦怠  
- 鐘  
- 否  
- 終着駅  
- 口  (詩誌 MY DEAR 佳作一歩前)
- 黒と白  
- 信じる  
- 挨拶  

 

◯月曜日の夕方、通勤

『倦怠』

言葉は

意味を失い

音が残された

 

やがて

音も失われ

暗闇と真空が

世界を覆う

 

無数の

星であったものが

宙を漂う

 

もう

このままでいい

 

再び

 

星屑は

重なり合い

力を蓄え始める

 

ぶつかり合い

大きさを増していく

周囲の塊を、吸収していく

 

重力は

中心にマグマを

火山は

大気を真空に放つ

 

音が

意味を得て

言葉が生まれる

 

また

繰り返し

 

疲れている

うんざりしている

ただ

暗闇と真空の中で

漂いたい

 

意味を

求め続ける

因果の行く末などに

興味は失せた

 

眠りたい

二度と

目を覚まさせないで欲しい

 

音が

鳴っている

 

言葉も

#自由詩 20260629(ver1)

 

◯火曜日の朝、通勤

『鐘』

2025年

出生数67万人

出生率1.14

 

国家存亡の危機

 

近い

未来が見える

 

若者が四割を切り

老人が多くを占める

そして

人種は入り混じり

差別が当たり前の社会

 

偏見がまかり通り

嘲笑う、暴力が蔓延る

憎しみは復讐を誘い

さらなる応酬が繰り返される

 

逃げ去った富裕層

貧しさだけのスラム街で

その日暮らし

民主政治は崩壊し

人種ごとの住み分けが進む

 

国家としての体はなせず

各地が自治領として独立

互いに、争い続ける

 

廃墟と貧困、疫病が

広がり続ける

 

三十年から

五十年後のこの国の姿

 

鐘は

鳴り響いている

 

現在、進行形の国々は

為す術もなく

崩壊していく医療と治安

国、人

そのものが変質していく

 

誰でもない

誰でもある

何処にでもいる

アイデンティティ無き

混沌の集団へ

 

   ✳

 

通勤の途中

周囲を見回す

⋯⋯

平和な世界と

あちこちに破綻の兆候

 

10年後、20年後も

出生数と出生率は

下がり続ける

 

砂に埋もれた廃墟のように

地中に眠る遺跡のように

国家そのものが

滅亡へと向かう

 

何処からか

鐘の音が聞こえる

弔いの鐘が

鳴らされている

#自由詩 20260630(ver1)

 

◯火曜日の夕方、通勤

『否』

結局、人間とは

救われない

 

愛と業の

果てしなき深さ故に

どう足掻いても

苦しみ続ける

 

故に、仏や神が

必要とされる

 

人間とは

人間では救えない

領域がある

 

見せかけの幸不幸

喜怒哀楽を生む交々の

そういった

ごまかしの内に潜む

人間の心は

他人には嘘をつける

しかし

自分自身は騙せない

 

責める

苛む、最大の存在とは

自分自身

 

地獄とは滑稽

自分自身こそ

最悪の獄卒であるのに

業火や串刺しが

どうしたというのか

 

人間の

最大の苦しみとは

生きること

罪を重ねること

 

愛と業は

人間そのものを

形づくり

根本から破壊する

 

人間は

簡単には死ねない

 

自分が

人間であるとの認識は

地獄の

最下層で蠢く

亡者と等しい

 

哀れ哀れ、ただ哀れな自分よ

 

消滅を願う

一秒でも早く

人間という意識を失いたい

 

天国から垂れる

一本の糸

 

結局、人間とは

救われない

 

たった独りで

溺れ、足掻き、苦しみ続ける

 

そのために

神や仏が必要とされる

 

 

希望を、救いを

棄ててこそ

真実が現れる

#自由詩 20260630(ver1)

 

◯水曜日の朝、通勤

『終着駅』

今回も抜け出せない

繰り返し

同じ時にいる

 

どうすれば

ループを破壊出来る

 

何処にでもある

通勤電車内

乗り換え駅までの

四半刻を

一ヶ月繰り返している

 

水や食料は

毎回、同じ乗客から奪う

終着駅に着けば

何をしてもリセット

 

非常停止ボタンは無効

車掌に説明しても

四半刻には忘れられる

 

疲労、眠気

数時間眠っても

起きれば状況は変わらない

 

ガタンゴトン

規則的な走行音と

微振動が続く

 

牢獄に
閉じ込められた感覚

 

考えろ、考えろ

何か変化点はないか

 

座席に座り続ける

周囲を見回す

慣れた動作で非常扉を開ける

このまま外に出ても

瞬間、最初に戻る

 

ならばと

無表情に

なんの感情も沸かず

逃げる乗客を

片っ端から外へ放り出す

悲鳴が

車内に響き渡る

 

電車が

終着駅のホームへ

 

戻らない

 

アナウンスが流れ

電車は止まる

扉が一斉に開く

 

助かった

ループを破壊出来た

 

パトカーのサイレン音が

大きさを増している

 

数人の駅員が

こちらに向かってくる

 

そうかと

無表情のまま

走りだす

ここから

放り出さねばならない

 

まだ

続いているらしい

#自由詩 20260701(ver1)

 

◯水曜日の夕方、通勤

『口』

みんな

今から小ミーティングに入る

集まってくれ

 

会議室に入る

さて、今週の売り上げ

どうなってるか説明してくれ

 

はい

Bが、目標数値と

達成率の説明を始める

 

各自、ノートパソコンの

画面を見ながら話を聞いている

 

バンッ

 

Y課長が、軽く机を叩く

蜘蛛を見つけたらしい

 

次に、Cが話している

 

ふと、Y課長を見ると

口を動かしている

いつ、ガムを口にしたんだろう

 

会議は続く

 

バンッ

 

Y課長が机のヘリを叩く

小さなヤモリらしき尻尾が見えた

 

さて、次が私だ

画面を見ながら進捗を説明する

 

ふと

Y課長を見る

口を動かしている

端に、尻尾が見えた気がする

 

言葉に詰まる

 

どうしたんだ、A

 

Y課長は

何かを噛みながら

こちらに話しかけてくる

 

ネチャネチャと

生臭い

 

い、いいえ

何でもありません

 

説明を終える

 

よし、わかった

みんな、この調子でな

 

ミーティングは終わった

どこか空腹を覚えた

#自由詩 20260701(ver1)

 

◯木曜日の朝、通勤

『黒と白』

赤い靴というものを

この歳まで履いたことがない

 

靴といえば

学生時代は白

会社勤めでは黒か茶

休日も黒、青くらい

 

そもそも

服装が目立たない

黒か紺にワイシャツ

或いは

休日は地味なTシャツ

 

服装は変えられない

何十年、同じ格好

しかし、靴は変えられる

 

赤がいい

蛍光色のオレンジも

グッとくる

絵に描いた様なサラリーマンが

ある日の通勤で

カーマインレッドの靴を

履いて歩いている

 

白黒茶色で

変わらない通勤風景の中で

私の足だけが

今、ここで

光り輝いている

これは

魅力的に思えて仕方がない

 

夕方、靴屋さんに向かう

若者向けのお店

痛む右膝を庇いながら

探す

ルビーレッド色の

派手派手しい運動靴を

見つけた

 

脳裏に音楽が鳴りだす

 

通勤路

赤色の靴を履いて

軽やかに舞う、飛び跳ねる

自分の姿を想像する

 

駄目だ

いい歳をして

私の中の常識が語りかける

大丈夫か、正気じゃないぞ

ああ、わかっている

店を変えて

いつもの

黒い革靴を買うんだ

ああ、そうだね

 

   ✳

 

赤い靴というものを

この歳まで履いたことがない

 

これからも

#自由詩 20260702(ver1)

 

◯木曜日の夕方、通勤

『信じる』

信じるとは何か

斯く、あらねばならないことを

成し、続ける為に

必要不可欠のことと説く

 

希望も絶望も

何もかもひっくるめて

貴方の思う

信じることを出来たことが

貴方にとっての真実となる

 

他人のいう真実は

貴方の真実とは限らない

 

貴方の真実を

貴方自身が探し、求める

迷う、悩む、挫折する

それでも諦めない

いつかは見つかると

探し求める=信じること

 

結果ではない

その過程にある

どう思い、どう行動したのか

 

テレビや映画の

登場人物とは違う

私たちは人間であるし

人間とは

終生をかけて

信じることを創り出す

守り抜く

故に、人間なのではなかろうか

 

完成を求め続ける

過程に、その価値を見出す

完成は、存在しない

その次が見えるからこそ

信じることは尊い

#自由詩 20260702(ver1)

 

◯金曜日の朝、通勤

『挨拶』

こんにちは

お名前は何と申されますか

はい

山田左衛門尉

ヤマダ サエモンノジョウと申します

宜しくお願いします

 

次の方、どうぞ

はい

山田左衛門尉

ヤマダ サエモンノジョウと申します

宜しくお願いします

 

これは珍しい

全く同じお名前なんですね

 

次に女性の方、どうぞ

はい

山田左衛門尉

ヤマダ サエモンノジョウと申します

宜しくお願いします

 

……

なるほど

皆さん、ふざけていらっしゃる

いいですか

しっかりとチェックしてますよ

特に、そこの三人

 

ああ、私の自己紹介がまだでしたね

私は

山田左衛門尉

ヤマダ サエモンノジョウと申します

皆さん

宜しくお願いします

#自由詩 20260703(ver1)

 

所感)

■学問の道

モラルとは等価交換であり、

極端に偏るほどに、醜悪と化していく。

良い環境を希望するのであれば、優秀でなければならない。

しかし、良い環境にも悪があり、得てして悪い環境の悪より、世の中への被害は大きくなる。

 

孟子を学ぶ学徒としては、逆説的な言葉に聞こえるが、

善、という捉え方による。

 

近・現代社会に浸透した善悪二次元論のモラルと、東洋思想の一元論のモラルは根底から違う。

どのモラルを選ぶかで、人生の価値観すら左右する。

 

冒頭に述べた、モラルとは等価交換である、とは二元論の善悪を示す。

そして、

東洋思想の善とは、極端に偏るほどに、醜悪と化していく、悪は、行き過ぎた善にも、その姿を捉えなければならない。

 

善行には賞賛が与えられ、悪行には罰が与えられる。この交換原理が二元論的モラルの本質である。

 

学校教育のモラルはどうだろう。

超善人と極悪人がいて、集団意識を大切にしてみんなで仲良く、超善人を目指しましょう、切磋琢磨しましょう、ではない。

対価交換で、何も社会貢献(優秀な成績やスポーツで優れた実績を)出来得ない生徒は、落ちこぼれや、やがてはニートの烙印を社会から押されて、後の人生に詰まる。

 

極端に述べているが、この極端自体が二元論の十八番であり、だからこのような社会になっている。

もちろん、全否定するものではない。

近代化、神の下に平等、自由主義市場、二元論が根底になければ、人間は未だに封建制で空を飛んでもいないか知れない。

 

功罪はあれど、弱者の立場が違う。

二元論の弱者とは、極端に述べれば救済の対象として生かされている。存在自体が、受け身的な結果論.敗者=悪とすら社会に認識される。

一元論の弱者とは、勝者と対等の存在であり、その能力分の生活を過ごす、それを楽しみすらする。間違っても、勝者に媚を売り、お情けを求めることはない。

 

何もかも引っくくって、人間のモラルとは善悪に分けようとする。

と、するから生き難い世の中となる。

何も、その価値観を強制されている訳ではないのに、生まれてからずっと矯正され続けて、他が見えない。

 

論語、孟子を学ぶ、学び続ける、一生をかけて教えを実践していこうとすると、こういう価値観を抱く、気づきがある。

 

弱い、とは恥ではない。

弱いと、自分自身を認めて、自身の歩める人生に満足する。

他人の比較、勝ち負けは、あくまで他人の範疇にあり、

自らの悪を憎み、自らの善を、中庸に生きることとは生き易いものだ。

 

これを古臭いと一蹴することは簡単である。

事実、今の世の中では、そうなっている。

世の中=他人が決めた価値観に、盲目的に従うことが善、とする社会に私たちは生きている。

 

私は弱者である。

地位も名誉も、財産も関係はない。

それでも、私の価値観で生きる幸せを実感している。

東洋思想は学ぶだけではない、学び続ける、実践する=生活することが醍醐味ではないか。

 

   ✳

 

生き辛い世の中であるが、

生き辛いと思っている、その価値観自体の正誤はどうなのか。

枝葉=世の中や隣人、マスコミに答えを求めるより、

東洋思想を学ぶ、実践する。

根本を掘り返すことは、損にはならない。

 

何ごとも、何人も、

鵜呑みにしてはならない。

自ら考え、行動し、言葉は慎み、結果に責任を負う。

これこそ弱者の鉄則ではなかろうか。