書き下し文)
戒む、
爾酒を嗜むこと勿かれ。
狂薬にして佳味に非ず。
能く謹厚の性を移し、化して凶険の類と感す。
古今の傾敗せる者、歴歴皆記す可し。
小学 外篇
意訳)
酒を好み、毎日浴びるように呑んではならない。
酒は人を狂わし、その味は偽りに満ちている。
酒は人の謹み深さを奪い、狂犬のような類いに変える。
古今、酒に呑まれて身を滅ぼし、親子兄弟を不幸にした者は数知れず。
目前に累々と重なる屍たちを、しかと脳裏に刻むべし。
所感)
■死者は手招き
安価な酒が昼夜問わず売っており、酒呑みに対する社会的禁忌も低く、たまの二日酔い、酒臭さを許容する社会にいる私たちではあるが、
文中にもあるようにに、私たちが見えない所で、酒で身を滅ぼした人たちが累々とひしめき合い、こちらを手招きしているような感もある。
酒を飲むからには理由があり、次いで、酒を飲むことが理由となり、やがて、酒が本体と化し、我が身を滅ぼす。
■天敵あらわる
害虫のヒアリには天敵のタイコバエがいるという。ヒアリに産み付けた卵は直ぐに孵化し、幼虫は頭に移動する。寄生されたヒアリは直ぐに死ぬことはないが、働くことはなくなり、巣でウロウロして他の蟻に養ってもらう。
やがて、頭の中で大きくなった幼虫は、仕上げにヒアリの首を切る。巣の中で、ぽとっと落ちた首と崩れる身体。死体は仲間の蟻により外に運ばれ、やがて頭から幼虫が孵化し、再び、ヒアリに卵を産み付ける。
■人の天敵は
酒を実体化すれば、このようなものではないか。酒を体内に入れると、やがて人格を乗っ取られ、家族や社会に養われながらも、宿主を死に至らせるまで酒を呑ませる。
酒とは、人の天敵なのだ。
酒に自我を乗っ取られなければ、過ごすはずの家族との時間、笑顔、自らの為さねばならぬこと、
人の全てを酒は奪う。
今日、一日の読書を学問として、努め励みたい。