書き下し文)
舉世交遊を重んじ、金蘭の契を結ばんと擬す。
忿怨容易に生じ、風波當時に起る。
所以に君子の心、抂抂として淡きこと水の如し。
小学 外篇
意訳)
世の中の人たちは、人との付き合いを重くみる。
易経にある「金襴の契り」のような、
互いに君子であるかのような、自分たちを美化した関係を世間に誇ろうとする。
しかし、その実は君子でもなく、私利私欲に塗れ、他人を蹴落とそうとする人たちが多くある。
そして、お互いに怒りや恨みを抱き、争いや復讐を常とし、周りを巻き込んでは大きな争乱をおこす。
一方、君子とは、人との付き合いを、淡々と流れる清流が窪みを一つ一つ満たすように行う。
このように自らが淡であり、水の流れのような理があってこそ、人と本当の付き合いを行える。
言葉)
■金蘭の契
易経を原典とする。
極めて固く親密な友人関係のこと。
「蘭」はよい香りのするふじばかまのこと。
金のように堅く、蘭のようにかぐわしい関係。
所感)
■背後の影
小学とは、確かに初学者向けの書とされている。理や道といった儒学の深淵は、次の大学から学ぶこととされ、あくまで儒教社会における集団生活の為のマナー、道徳、禁忌を説く。
しかし、一言一言、一文一文の背後に、四書、五経の影響下にある重みがあり、一言、一文を深く考えると、背後の大親分たちの影が現れる。
小学を、良書とされる方が多いのも理解出来る。
今日、一日の読書を学問として、努め励みたい。