書き下し文)
何をか言を知ると謂う。
曰くヒ辞はその蔽わるる所を知り、
淫辞はその陥る所を知り、
邪辞はその離るる所を知り、
遁辞はその窮まる所を知る。
その心に生じれば、その政に害あり。
その政に発すれば、その事に害あり。
聖人復起こるも、必ず吾が言に従わんと。
孟子 公孫丑章句
意訳)
先生は、他人の言葉を聴けば、その人の本質を理解することが出来る、とのことですが、どのようなことなのか教えて下さい。
·偏った見方や、片寄った考えの発言をする人からは、
その人の心が、独り善がりな、極端な方向に向いていることがわかる。
·みだらな、なんの考えもない発言をする人からは、
その人の心が、なにか別のことに奪われていることがわかる。
·よこしまで、道理に反する発言をする人からは、
その人の心が、公明正大な原理原則から離れてしまっていることがわかる。
·自己保身ばかりで、責任逃れの発言をする人からは、
その人の心が、どうしようもなく、袋小路に迷い込んで、正しいことがわからなくなっていることがわかる。
このような発言を、国の政治に関わる人たちが言うようになれば、その国に大変な危機がおとずれる。
そして、実際、このような発言をする人たちによる政治が行われれば、国政に重大な損害が生じ、やがて、国家の屋台骨自体が歪み、国の存続の危機となろう。
古の聖人も、私の今述べたことに、必ず同意されるであろう。
所感)
■現代に通じる孟子
大には、国の政治を行う、昨今の政治家の言動であるし、小にはブラック企業でいまだに横行する現実であろうか。
孟子の人間観察力の鋭さには、ただ脱帽するばかりだ。
あまりにも現代に通じる内容、故に、日ごろから感じる不平不満を長々と書きそうで、コメントを控えたい。
ただ、自らがこのような言葉を発せぬよう、よりいっそう、儒学の勉強に勤しみたいと思う。