四端録

東洋思想に関して。四書を中心に意訳して所感を述べ、三行詩にて日々の出来事、思うことを記しています。

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孟子 為さざると、能わざるとの形は

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書き下し文)

曰く、為さざると、能わざるとの形は、何以(何如)に異なるや。

曰く、山(泰山)を鋏みて以て北海(渤海)を超えんこと、人に語げて我能わずと言う。

是れ誠に能わざるなり。

長者の為に 枝(肢)を折げんこと、人に語げて我能わずと曰う。

是れ為さざるなり。能わざるに非ざるなり。

故に王の王たらざるは、大山を鋏みて以て北海を超ゆるの類にあらざるなり、

王の王たらざるは、是れ枝を折ぐるの類なり。

吾が老を老として、以て人の老に及ぼし、吾が幼を幼として、以て人の効に及ばさば、天下は掌に運らすべし。

詩に云く、寡妻を刑(正)し、兄弟に至(及)ばし、以

て家邦(国家)を御(治)むと。

斯(其)心を挙げて諸を彼に加うるを言うのみ。

故に恩を推ぼせば、以て四海を保んずるに足り、恩を推ぼさざれば、以て妻子を保んずる無し。

古の人大いに人に過ぎたる所以の者は、他無し。善くその為す所を推ぼせるのみ。

今恩は以て禽獣に及ぶに足れども、功は百姓に至らざるは、独に何ぞや。

権りて後に軽重を知り、 度りて短を知る。

物皆然り。

心を甚だしと為す。王請う之を度れ。

孟子 梁恵王章句

 

意訳)

斉の宣王が問う。

為さないのと、出来ないとでは、何が異なるのか。

孟子はいわれた。

泰山を小脇にかかえて渤海を飛び越えることは、私には出来ないと人にいうのは、本当に出来ないこと。

一方で、

目上の人に腰をまげてお辞儀をすることを、私には出来ないと人にいうのは、為さないこと。

 

故に、

王が王の本来の務めを行わないとは、

泰山を小脇にかかえて渤海をとびこえようとする類ではなく、

目上の人に腰をまげてお辞儀をすることが出来ない類のことといえる。

つまり、

自分の父母を尊敬するのと同じ心で、他人の父母も尊敬すること。

自分の子弟を愛するのと同じ心で他人の子弟も愛すること。

こうすれば、天下広しといえど、王の手の掌で玉を転がように、国を治めることが出来る。

 

詩経にいう、

『夫人を導き正しくし、ひいては兄弟、そして民、そして国を安らかに』。

この意は、両親、妻子に思う心を、一族、民、やがては国全てに広げよとのこと。

故に、

この思いやりの心、あわれみの心をおし広げれば、国を超え、やがては天下も治めることが出来る。

一方、

この思いやりの心、あわれみの心をおし広げなければ、自分の妻子でさえ治めることは出来ない。

つまり

古の聖人にしろ、彼らが偉大だったのは、

ただ、よくこの思いやりの心、あわれみの心をおし広げたからに他ならない。

 

省みれば、

今、王が、宮殿でその心を、生け贄の牛が殺されるのを憐れむまでに及ばせているのに、国の民には王の思いが全く及んでいないのは何故か。

つまり、

秤に乗せてみなければ、物の軽重は分らない。

物差で測ってなければ、物の長短はは分らない。

このように、

あらゆる物はみな同じく、測るということが必要なもの。

そして、人の心こそ、この測るということが最も必要であり、又、最も測りにくいもの。

 

王よ、王としての自らの心を測られよ。

何が為すべきことで、何が出来るのか。

 

所感)

■学問の道

10月19日以来のベース基地、孟子への帰還となる。

孟子 心を養うは欲を寡なくするより善きはなし - 四端録 https://aristotles200.hatenablog.com/entry/2021/10/19/170554

実は、上記の回で、「心を養う」の「養う」の解釈に苦しんだまま、私の学問の道は躓いていた。

なんせ、「心」の解釈とは、儒学の根底に関わること。

躓いた小石は、最近は眼前にそびえ立つ大岩と化し、いよいよ避けては通れなくなった。

 

今朝、自力での解決を諦める。

そして、学問の道に入るきっかけとなった、Twitterで知り合えた先生にご指導をお願いした。

結果、大漢和辞典によれば、「養う」は「修める」との意があるとのこと。

先生の一撃により大岩は砕け散り、目前に再び学問の道が現れた。

ご指導によれば、やはり一文字の解釈の違いで学問が躓くことがあるとのこと。

大漢和辞典13冊揃」なるものがあること。

 

■復帰

今回の挫折は、決して無駄にはならなかったと思う。

易経を学ぶきっかけとなったこと。(易経は挫折中で中途半端のまま、リベンジ待ち)

もう一人のTwitter上の学問の道の先生から、種田山頭火、自由律の世界を教わったこと。

大漢和辞典は、購入を検討する。

 

及び、ベース基地の孟子に関しては、新たにテキストを加える。

孟子 (1966年) (新訂中国古典選〈第5巻〉) https://www.amazon.co.jp/dp/B000JAAXTY/ref=cm_sw_r_apan_glt_i_1JZZD08JVXRCEQC8Z8ZH

今週中には入荷する予定。

現代語訳はないが、孟子であればなんとかなる。

楽しみでしかたがない。

 

学問の道とは、なんと困難で、楽しいことか。

 

今日、一日の読書を学問として、努め励みたい。

#儒学 #孟子