四端録

東洋思想に関して。四書を中心に意訳して所感を述べ、三行詩にて日々の出来事、思うことを記しています。

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孟子 為さざる所を為す所なく

f:id:aristotles200:20210914203826j:plain書き下し文)

孟子曰く、

其の為さざる所を為す所なく、

其の欲せざる所を欲することなし。

此く如きのみ、と。

尽心句章上

 

意訳)

孟子がいわれた。

人としてして、最高の行いとは、

·為してはならぬことを、為さず、

·欲してはならないことは、欲しない。

君子の道とは、詰まるところ、この二つに尽きる。

 

所感)

■二つの行い

原文は、わずか十七文字に過ぎない。

内容は、この二行のみ。意を反転すれば、

·行って善いことを、行い、

·欲して善いことを、欲する。

理屈からいえば簡単で子供でも理解できる。

だが文章だけ読めば、このわずか二行のことを人生において、いまだ続けて行えないのが私たちだ。

しかし儒学は、孟子は、この二つを行えると解く。

人であれば、生まれた時から備え持つ両親を思う当たり前の気持ち、相手の気持ちを思いやる心、

「あわれみの心」

この心を育んでいけば四端に通じ、やがては四徳に至る。

人として最高の行いにつながっていくと。

 

■四端四徳

○四端(惻隠、羞悪、辞譲、是非)

·あわれみの心(惻隠)

·善いことを行なわないことを、恥じと思い、憎む心(羞悪)

·お互いに譲り合う心(辞譲)

·善悪、を判断する心(是非)

○四徳(仁、義、礼、智の四徳)

·仁の徳の芽生えとは、人の不幸を見過ごせないあわれみの心。

·義の徳芽生えとは、自分の不善を恥じ、不善を憎む心。

·礼の徳の芽生えとは、譲り合う心。

·智の徳の芽生えとは、善し悪しを見分ける心。

 

■君子の道

儒学とは、孔子孟子の教えとは、

いたって人として当たり前のことを述べている。

しかも人であれば皆行えることばかりだ。

·行ってはならぬことを、行わず、

·欲してはならないことは、欲しない。

短い端的な文章であるが、

四端、四徳につながる儒学の本質をついている。

■至らぬ我が身

率直な感として、この章の所感を書くのにたいそう苦しんだ。

この二行が、もはや呪いのように脳裏を巡る。

いつもの明るさが、心に戻ってこない。

〜しない、ことを、〜しない ✕2

否定型が4つ重なり、最後は君子の道だ。

至らぬ我が身にとって、君子の道とは、なんと近くて、なんと遠いことか。

 

我が身の学問の浅さをただ感ずるのみ。

#儒学 #孟子