原文)
孟子曰、君子不亮、惡乎執。
孟子 告子章句下
意訳)
孟子はいわれた。
君子とは、融通が利かず、真っ正直なだけの、
己の小さな信(誠)にこだわる者では、決してない。
君子とは、小さなことに固執はせず、
ただ、大きな信(誠)で、物事を為すのだ。
所感)
■大信と小信
原文では、わずか十文字であるが、
その伝えることは深い。
この文章は、信の徳について述べている。
己が固執が過ぎ、小さな信にこだわれば、すなわち、信は遠ざかる。
そして、君子たるもの、一つのことに囚われて、大きなことが見えないようでは、もはや君子ではあり得ない、との君子論でもある。
四端、四徳にはじまる孟子の儒学の教えは、いずれも素晴らしいものであるが、
一つの徳に対して、己の小さな世界で固執が過ぎれば、
もはや、徳ではなく、周囲に対して、害まで与えかねない。
我が身を省みれば、自分では良いことをしたと思っている行いでも、
果たして、大きな信の上での行いなのか、
自分勝手な、周囲を省みない小信の行いであったのか、
単に、良いことだから、の行いに潜む真実に、
これまでの我が身の行いを省み、ただ、冷や汗をかくのみか、
明日に、活かしたい。